未知谷の刊行物【海外文学】
ドクトル・ジヴァゴ
ボリース・パステルナーク 著 / 工藤正廣 訳
A5判上製752頁 8,000円(税別)
ISBN978-4-89642-403-4 C0097
《これで神から遺言された義務を果たし得たのです》
このパステルナークの言葉が納得できる一冊
1905年鉄道スト、1917年二月革命に始まる労働者蜂起、
ボリシェヴィキ政権、スターリン独裁、大粛清――
激動のロシア革命期を知識人として奇蹟的に生き抜き、
ロシア大地と人々各々の生活を描き切った、
何度でも読みたくなる傑作スペクタクル!
すすみ行き、すすみ行き、《永遠の記憶》を歌い、やがて停止すると、人の足も、棺を挽く馬も、立つ風も、最後の時の聖歌を惰性でまだ歌いつづけているようだった。
通りすがりの人たちは道をあけ、花輪の数をかぞえ、十字を切った。物見好きなものたちは列に割り込んでたずねた。《どなたのおとむらいでしょうか?》《ジヴァゴです》――と返事が返された。――《道理で。それならわかります》――《いいえ、彼ではなく、奥さまです》――
(本書冒頭より)
わたしはあくまでも文字通りの逐語訳を押して、多少のごつごつした点があっても、とにかく原文の言葉をできるかぎり、忠実に起こして、解釈や入れ台詞などなしに、作者の肉声を伝えることだと思っている。日本訳は巧みに日本化するということではない。「翻訳」というロシア語は「ペレ・ヴォト」というが、この原義は、移動・転換ということであり、いわば転轍させることであり、訳者の任務は、このポイントの切り替えを行うことである。たとえて言えば、ロシアの広軌車輛を日本の狭軌に移すに際して、油圧ポンプで台車ごと入れ替えて、そのロシア車輛をそのまま日本の狭軌鉄道に乗せて走らせるというようなことで、いきおい、はみ出す容量がある。文学の翻訳の仕事は、そのはみ出す容量を出来るだけ切り捨てないで、あふれさせたままで走るということでありたいものである。(「簡略年譜」註より)
目 次
頁
まえがきに代えて 川端香男里
1
第I部
第1章 五時の急行列車
13
第2章 別圏から来た少女
35
第3章 スヴェンチツキー家のヨールカ祭
89
第4章 運命の到来
125
第5章 旧世界との別れ
173
第6章 モスクワの露営
219
第7章 旅路
275
第II部
第8章 到着
339
第9章 ヴァルイキノ
370
第10章 大道で
408
第11章 森の義勇軍
435
第12章 雪のナナカマド
465
第13章 女像柱のある家の向い
496
第14章 ふたたびヴァルイキノで
552
第15章 終焉
612
第16章 エピローグ
661
第17章 ユーリー・ジヴァゴの詩
683
訳者あとがき
719
主な登場人物
727
簡略年譜
735
工藤正廣 [くどう まさひろ]
1943年青森県黒石生まれ。北海道大学卒。現在同大学名誉教授。ロシア文学者・詩人。 著書に『パステルナーク 詩人の夏』『ドクトル・ジバゴ論攷』『ロシア/詩的言語の未来を読む』『新サハリン紀行』『
TSUGARU
』『
ロシアの恋
』『
片歌紀行
』等、訳書にパステルナーク抒情詩集全7冊、7冊40年にわたる訳業を1冊にまとめた『
パステルナーク全抒情詩集
』、『ユリウシュ・スウォヴァツキ詩抄』、フレーブニコフ『
シャーマンとヴィーナス
』、アフマートワ『
夕べ
』、チェーホフ『
中二階のある家
』、ピリニャーク『
機械と狼
』(川端香男里との共訳)、パステルナーク『
リュヴェルスの少女時代
』『
物語
』、ロープシン『
蒼ざめた馬 漆黒の馬
』など。
小社刊の
ボリース・パステルナーク
の著作物
[
わが妹人生
1917年夏
]
[
初期 1912―1914
あるいは処女詩集から
]
[
バリエール越え
1914―1916
]
[
晴れよう時
1956―1959
]
[
早朝列車で
1936―1944
]
[
第二誕生
1930―1931
]
[
主題と変奏
1916―1922
]
[
リュヴェルスの少女時代
]
[
物語
]
[
パステルナーク全抒情詩集
]
小社刊の
工藤正廣
の著作物
[
TSUGARU
(つがる)――物語の声・文体論レッスン――
]
[
ロシアの恋
]
[
片歌紀行 今に生きる建部綾足
]
[
永遠と軛
ボリース・パステルナーク評伝詩集
]
[
アリョーシャ年代記
春の夕べ
]
[
いのちの谷間
アリョーシャ年代記2
]
[
雲のかたみに
アリョーシャ年代記3
]
[
郷愁
みちのくの西行
]
[
西行抄
恣撰評釈72首
]
[
チェーホフの山
]
[
〈降誕祭の星〉作戦
ジヴァゴ周遊の旅
]
[
1187年の西行
旅の終わりに
]
[
ポーランディア
最後の夏に
]
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没落と愛 2023
РАЗОРЕНИЕ И ЛЮБОВЬ 2023г.
]
[
幻影と人生 2024
ВИДЕНЬЕ И ЖИЗНЬ 2024г.
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ユゼフ・ローザノフ
青春の終わりに
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小社刊の
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関連の著作物
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シャーマンとヴィーナス
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中二階のある家
ある画家の物語
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蒼ざめた馬 漆黒の馬
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夕べ
ヴェーチェル
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[
機械と狼
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ユリウシュ・スウォヴァツキ詩抄
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鼻
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ドクトル・ジヴァゴ
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