未知谷の刊行物【海外文学】



 
初期 1912―1914 あるいは処女詩集から
ボリース・パステルナーク 著 / 工藤正廣 訳・解説
四六判上製96頁 1,200円(税別)
ISBN4-89642-051-9 C0098



詩人は泣く、詩の中で慟哭する。それは、宇宙が泣くということ、つまり、人の内なる魂が泣いているということだ――
 
二月のモスクワ、一番の凍寒が緩み始める二月の半ば、そのあとにやって来るのはいよいよ春なのである。三月ともなれば、本当の春が待ち遠しくて人々は気が狂いそうになる。パステルナークは、狂おしい程の雪解けの自然力と詩の出来上がるのを一つのことのように捉えて詩作する。
『初期 1912―1914』は宇宙の響=人間の生の意味を探る詩人の鮮烈なデビュー作といえる。

二月だ インクをとって泣け!
泣きじゃくりながら二月について書け
ざんざめく霙の雨が
黒い春となって燃えているあいだに
 
疾走する辻馬車をつかまえよ 60カペイカで
教会のミサの刻をつげる鐘の音 車輪の叫びをくぐりぬけ
そこ どしゃぶり雨がインクよりも涙よりも
もっとざんざめく場末へ駆けつけよ
 
そこでは焼け焦げた梨のように
無数のミヤマガラスたちが
木々から一斉に水溜りたちへ落下し
乾いた寂寥を眼底に浴びせるのだ
 
その寂寥によって雪解け箇所は黒ずむ
風は叫喚によって引っかき回される
そして 偶然であればあるほど忠実に
泣きじゃくりながら一篇の詩はできていく
 
「二月だ インクをとって泣け!」より


目  次

対話 パステルナークの『初期』について

初期
〈二月だ インクをとって泣け!〉 18/〈焼炉の青銅灰みたいにカブトムシたちを〉 20/〈きょうは奴の憂愁を演じてやろう――〉 22/〈詩の竪琴の迷宮へ〉 24/夢 26/〈ぼくは成長した ガニュメデスのようにぼくを〉 28/〈きょうみんなはコートを着て出かける〉 30/〈きのう子供になって寝入ったものたちは〉 32/発着駅  35(*ロシア語原詩 38/*ローマ字翻字 39)/ヴェネツィア 40/冬 43/酒宴の日々 46/〈夜明け前の広場の とどろき鳴り響く〉 48/冬夜 50
18 
補選 『雲の中の双生児』初出篇から
森の言葉 54/〈夜明けの広場の〉 56/〈囚われのセルビア女のように〉 58/〈蝋燭の灯りがどんなに力んでも日は昇らない〉 60/双子座 62/発着駅 64
54 
この訳詩集のためのエッセー 解説にかえて
69 
〈〉付きのタイトルは原書では無題

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初期 1912―1914 あるいは処女詩集から
ボリース・パステルナーク 著
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