未知谷の刊行物【海外文学】



 
わが妹人生 1917年夏
ボリース・パステルナーク 著 / 工藤正廣 訳・解説
192頁 2,000円(税別)
ISBN4-89642-009-8 C0098



ボリース・パステルナークは浪費の作家である。尽きぬ愛を惜しみなく流出する。パステルナークは画家である父と音楽家である母との間に生れ、幼少時からトルストイ、リルケ等多数の芸術家に囲まれる環境に育った。1922年、第三詩集であり恋愛詩集でもある本書『わが妹人生』で著名詩人となる。1958年ノーベル文学賞拝受。「いとおしい存在にむかって呼びかけられている気がする」というのは吉増剛造氏だが、パステルナークの詩は音楽であって、その韻律はロシア語ロシア人の心身にとって自然そのものと言われる。日本で言えば絶妙な短歌的世界の韻律とでも言うべきか。ロマン『ドクトル・ジバゴ』で描いたように、人間とは何か、自然とは何か、そういう根源を、これまでにない詩的スタイルで創造しなおしてみせた。『わが妹人生』は「いとおしい存在」=人間の根源・自然の根源への無限接近だが、二十世紀を代表する抒情詩の白眉といえよう。

そしてそのあとで夏は別れを告げた
小駅と。帽子を脱いで、
百の 眼のくらむ写真を
記念に夜にとったのは雷だ。
 
ライラックの花房は仄淡く褪せていった、この
とき、彼は一抱の稲妻をちぎって
それで野辺から 上手に
ぱっと役場の建物を照らしだした。
 
そして建物の屋根に沿って災厄
悪意の波は氾れ、
一枚の画用紙に降る木炭のように
垣根みなに驟雨が鳴り響いたとき、
 
意識の雪崩がまばたきはじめた。
見よ、さながら、
そこは昼のように今は明るい 理性の
隅々までもがぱっと照らしだされるようだった!
 
「永遠に一瞬の夕立」より


目  次

デーモンの鎮魂に捧げて

〈鳥たちの歌うときではないのか〉
この詩について 9/憂愁 12/〈わが妹人生は〉 14/泣く園生は 16/鏡 18/少女 22/〈鳥たちの歌うときではないのか〉 24/雨 26

〈草原の書〉
このことすべての前まで冬だった 28/迷信ゆえに 31/触るな 33/〈きみはこの役を〉 34/バラショーフ 36/まねるひとたち 38/見本 40
28 
〈愛するひとのための気晴し〉
〈馨しい小枝ひとつを〉 44/櫂を休めて 46/春の雨は 47/民警の呼子 50/夏に星たちは 52/英語のレッスン 55
44 
〈哲学の勉強〉
詩の定義 58/魂の定義 59/地の病い 61/創造の定義 63/われらの雷雨 65/代理の女 69
58 
〈彼女がふさぎこまないための手紙の中の唄〉
雀ケ丘 73/Mein Liebchen, was willst du noch mehr? 75/ラスパート 79
73 
〈ロマノフカ〉
草原 82/息苦しい夜 86/さらに息苦しい夜明け 88
82 
〈たましいを訣れさす試み〉
ムチカープ 92/ムチカープの喫茶店のハエ 94/〈その出むかえは野生〉 98/〈たましいをきみと訣れさす〉 101
92 
〈戻り〉
〈なんと睡気を〉 103/わが家にて 113
103 
〈エレーナに〉
エレーナに 115/彼らあっての如くに 119
115 
〈息たえた恋人の面の上で。〉
夏は 121/永遠に一瞬の夕立ち 124
121 
〈あとがき〉
〈恋人よ〉 126/〈さあ 言葉たちを〉 129/あった 132/〈愛すること〉 136/あとがき 139
126 
〈終焉〉
〈すべては現なのか〉 142
142 
解説・エッセー
〈わが妹人生〉――聖なる乙女をめぐる一九一七年夏 147/追い書き 149
147 
〈〉付きのタイトルは原書では無題

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ボリース・パステルナーク 著
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