未知谷の刊行物【国内文学】



 
おん身は花の姿にて 網野菊アンソロジー
網野菊 著 / 山下多恵子 編・解説
四六判上製288頁 2,400円(税別)
ISBN978-4-89642-327-3 C0093



時はゆっくりと濃密に流れている
深い教養に支えられた筆尖からは
女流の凛とした嗜みが香りたつ
 
読者は厳選されたこの作品集に
紡がれた細やかな悲喜哀歓に
惹かれ深い共感を覚えるだろう

 
日々の様々な出来事から生まれる哀歓や、泡のごとくわき上がる感情。それらを丹念に書きつらねることによって、新たな感性が開花した。志賀直哉を師と仰ぎ、生涯をかけて「私」を書き続けた作家・網野菊の遅々として豊饒なる感受の軌跡。(編集部)
 
生きていく苦しさと、それを書く苦しさと――それはある時は二重の苦しみとなって彼女を圧してきたかもしれないが、またある時には、書くことが生きていくことを促すこともあったのではないだろうか。(編者解説より)
 
網野菊さんは、静かな遠慮深い人で、目立つ事を好まない如何にも地味な存在であつた。しかし人一倍細かい神経とあたたかい心を持ち、しかも、根にはしつかりした、剛性といつてもいいやうな所のある人である。網野さんは人の悪口を伝へる様な事は決してしない代りに、好意は忘れず伝へると云ふ人である。網野さんの文学は独自の世界を持つてゐて、噛みしめて、更に味のあるのはかういふ人柄からくるものと思ふ。(志賀直哉)


目  次

はじめに

本書の構成について

プロローグ 幼き日(抄)

第一章 母
母 10/光子 36/さくらの花 99

第二章 若い日
〈恋〉 若い日(抄) 144/夕映え 179
〈結婚〉妻たち(抄) 189/実績 201/霧の夜 205
〈師〉 震災の年 213/冬の花 221/感謝 223/夫婦愛の強さ 225
143 
第三章 一期一会
イワーノワさん 230/一期一会 248
229 
エピローグ つわぶき
267 
解説
269 
略年譜
283 

網野菊 [あみの きく]
1900年、東京生まれ。志賀直哉を生涯の師と仰いだ女流作家。幼少時に実母と離れ、以後三人の継母に育てられた経験をもとに、自らの身辺を描いた私小説的作風で知られる。その一方、ロシア児童文学の翻訳なども手がけた。1962年「さくらの花」で芸術選奨文部大臣賞、女流 文学賞、68年「一期一会」で読売文学賞、芸術院賞受賞。日本芸術院会員。1978年没。
 
山下多恵子 [やました たえこ]
1953年、岩手県雫石町生まれ。高校教諭を経て、現在長岡工業高等専門学校非常勤講師。国際啄木学会理事。日本近代文学会会員。『北方文学』同人。著書に『海の蠍』、『忘れな草』、『裸足の女』、『啄木と郁雨』、編書に『土に書いた言葉*吉野せいアンソロジー』(未知谷)がある。

小社刊の山下多恵子の著作物
[海の蠍(さそり) 明石海人と島比呂志 ハンセン病文学の系譜] (旧版・品切れ)
[忘れな草 啄木の女性たち]
[裸足の女 吉野せい]
[啄木と郁雨 友の恋歌 矢ぐるまの花]
[増補新版 海の蠍(さそり) 明石海人と島比呂志 ハンセン病文学の系譜]
[朝の随想 あふれる]
[かなしき時は君を思へり 石川啄木と五人の女性]
[さびしさを紡ぐ ハンセン病を生きるということ]
 
小社刊の山下多恵子関連の著作物
[土に書いた言葉 吉野せいアンソロジー]
[恋する昭和 芝木好子アンソロジー]
[美しい記憶 芝木好子アンソロジー]


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おん身は花の姿にて 網野菊アンソロジー
網野菊 著/山下多恵子 編・解説
2,400円(税別)

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