未知谷の刊行物【海外文学】
ソネット集
Sonety
《ポーランド文学古典叢書》第2巻
アダム・ミツキェーヴィチ 著 / 久山宏一 訳
四六判上製160頁 2,000円(税別)
ISBN978-4-89642-702-8 C0398
同じ年ごろの仲間の群れに囲まれて ぼくは恋についての歌を口ずさんでいました、
ぼくを褒める人もいれば こう呟く人もいました
「この詩人は愛してばかりいる 苦しみ 恨む
他の何も感じない または歌えない。
少しは成熟した年ごろになり 知性も齢を重ねたのに
なぜ心は そんなに幼い炎に燃えているのだろう?
神々が 彼に詩人の声を与えたのは
どの抒情詩でも 己れについてばかり 歌わせるためだったのか?」
思慮深いご忠告です!――さっそく 高尚な決意を固め
アルカイオスの竪琴を手に取り ウルスィンの弦で
演奏を始めると 仲間たちはみな
ぎょっとして耳をつり上げ 散り散りになってしまいました
ぼくは弦を切り 音を立てない竪琴をレテの水に投げます。
詩人は 聴き手に合わせるのです。
(「言い訳」より)
《ポーランド古典文学叢書》について
度重なる分割、ホロコースト等の悲劇を経て今なお「ポーランド」という国が存在するのは、彼らが自らにまつわる物語=歴史を記し、有機的かつ実効性ある緊密禁固な文学空間を築いてきたからこそ、という言い方には一定の説得力があり、ポーランド語「帝国」の呼称さえ可能である。この、世界文学の中でも一種独自の境地に達したポーランド文学を体系的に紹介。2019年の日本ポーランド国交100年までを一応の目標として順次刊行予定。
本書の出版はポーランド広報文化センターの助成により可能になりました。
目 次
頁
アダム・ミツキェーヴィチのソネット
I ラウラに
10
II
12
III
14
IV 林のなかで逢う
16
V
18
VI 朝と夕
20
VII ペトラルカに倣って
22
VIII ニェメン川に
24
IX 射手
26
X 祝福
28
XI あきらめ
32
XII ***に
34
XIII
36
IV
38
XV おはよう
40
XVI おやすみ
42
XVII こんばんは
44
XVIII D.D.に
46
XIX 訪問者たちに
48
XX 別れ
50
XXI ダナオスの娘たち
52
XXII 言い訳
54
クリミア・ソネット
I アケルマン草原
60
II 凪
62
III 航海
64
IV 嵐
66
V コズウォフ草原からの山々の眺め
68
VI バフチサライ
72
VII バフチサライ――夜
76
VIII ポトツカの墓
80
IX 後宮の墓所
84
X バイダル盆地
86
XI アウシュタ――昼
88
XII アウシュタ――夜
90
XIII チャティルダフ山
92
XIV 巡礼
94
XV チュフト=カレの懸崖上の道
96
XVI キキネイス岳
98
XVII バワクワヴァの城跡
102
XVIII アユダフ山
104
補遺一 『アダム・ミツキェーヴィチのソネット』以前のソネット――一八一九〜二二
思い出
108
ニェメン川に
110
補遺二 『アダム・ミツキェーヴィチのソネット』と同時期のソネット
ソネット
114
ソネット
116
鷹
118
ソネット
120
補遺三 『アダム・ミツキェーヴィチのソネット』以後のソネット――一八三二
孤独に
124
年譜
126
解説
137
アダム・ミツキェーヴィチ [Adam Mickiewicz]
1798年ザオシェ(またはノヴォグルデク)生、1855年イスタンブール没。ロマン主義詩人、文学史家、思想家、政治家。ヴィルノ大学在学中から、愛国的運動に参加。1824年ロシアに流刑され、1829年出国。1832年にパリに定住。1839〜40年スイスのローザンヌで教鞭をとり、1841〜44年にはコレージュ・ド・フランスでスラヴ文学を講義した。クリミア戦争に際して、ポーランド義勇軍を組織しようとしたが病に倒れた。代表作は『バラードとロマンス』(1822)『父祖の祭』(1923〜33)『ソネット集』(1826)『コンラット・ヴァレンロット』(1828)『パン・タデウシュ』(1934)。
久山宏一 [くやま こういち]
1958年、埼玉県生まれ。東京外国語大学卒、早稲田大学大学院博士後期課程中退。アダム・ミツキェーヴィチ大学(ポーランド・ポズナン市)より文学博士号(スラヴ文学)取得。東京外国語大学など非常勤講師。ロシア・ポーランド文化研究、ポーランド語通訳。著者に『ミツキェーヴィチのソネットとロマン主義期のロシア・ソネット』(ポーランド語)、訳書にスタニスワフ・レム『大失敗』(国書刊行会)、共訳書にヴァンダ・ヴェルテンシュタイン編『アンジェイ・ワイダ 自作を語る』(平凡社)、アンジェイ・ムラルチク『カティンの森』(集英社)などがある。
小社刊の
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《ポーランド文学古典叢書》第3巻
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《ポーランド文学古典叢書》第8巻
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祖霊祭 ヴィリニュス篇
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ミコワイ・レイ氏の鏡と動物園
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Pieśni i fraszki 《ポーランド文学古典叢書》第10巻
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