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わが黄金のベンガルよ
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ラビンドラナート・タゴール 著 / 内山眞理子 訳
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四六判上製128頁 1,800円(税別)
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ISBN978-4-89642-445-4 C0098
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インドやバングラデシュの国歌となって人々に親しまれている母なる大地への思い、あふれる感謝を歌った歌詩集。
しかし、その大地がすばらしいと讃えるために、人としてなすべきことがあるとタゴールは言います。本書の冒頭に引用したタゴールの言葉をもういちど引き、その文からさらに続く一節をそのまま最後に引用したいと思います。これは、一九三一年に七十歳をむかえたタゴールが、詩人としての仕事について語った講演録の一節です。
「国は人間が創造したものです。国は土からできているのではなく、人間の心でできています。人間がかがやいていれば国もかがやいた姿であらわれます。水流に富み、果実と穀物がゆたかにみのる、白檀の木陰に心地よき風がふく土地を声高にふれまわればふれまわるほど、それだけ一層、その理由をきちんとかたる責任がついてきます。自然があたえるものはたんに物質的素材にすぎず、それが人間の富としてどれほどその手でつくりあげられたかという問いかけがあるということなのです。人間の手によって国をうるおす水が涸れてしまうなら、果実がみのらないなら、心地よい風が病気のもととなる原因で汚染されるなら、穀物がそだつ土地が不毛になるなら、詩の言葉をつかって国の恥をかくしおおすことなどできません。国は土でできているのではなく、国は人間によってできているのです。」(Viswa-Bharati 発行『ラビンドラ全集』第一巻プロローグより抜粋。原文ベンガル語。拙訳)(「訳者あとがき」より)
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目 次
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頁
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わが黄金のベンガルよ(バングラデシュ国歌)
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8
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わが故国の土よ
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12
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きみの呼びかけに
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14
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身内のものたちがきみを
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16
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干上がった川に
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18
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昼となく夜となく
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20
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わたしはこわくない
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22
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きみが無力になるとき、その力をだれに
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24
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ぼくらはみんな王様だ
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26
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気怖じしないで
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28
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なにもこわくない、かならず勝利はやってくる
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30
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われらの旅がはじまった
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32
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もろびとの心を動かしたまう方よ (インド国歌)
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36
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わが心よ、きよらかな巡礼の地に
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40
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ベンガルの土よ、ベンガルの水よ、ベンガルの風よ
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44
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きょうの日に 母よ
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46
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わたしに歌えといわないで
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48
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世界を魅了する方よ
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50
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この国にうまれて
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52
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あなたのもとを去るものには
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54
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きみをパゴルと呼ぶひとに
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56
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きみたちはなにもいわないで
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58
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不安があるならもどりなさい
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60
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母よ、あなたは
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62
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大地を涙でぬらすのは
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64
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遅れてはならない
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66
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勇気をだして立ち上がって
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68
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われらは行く
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70
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このインドにとわにあたえたまえ
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72
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いったいだれを
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74
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母の門べに
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76
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きょう、このインドは
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78
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進もう、さあ進もう
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80
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きよらかな業の道に
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84
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さあ、新しい時代の夜明けに
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86
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挫折した心の
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88
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かれらがきつく縛れば縛るほど
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90
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神意のさだめを
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92
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キャパよ、きみは気まぐれに
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96
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わたしのなすべき努力とは
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100
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補遺 「あるインドの民間宗教」より(抜粋)
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103
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訳者あとがき
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111
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ラビンドラナート・タゴール
[Rabindranath Tagore] (1861―1941)
英国統治下のインド・コルカタに生まれる。1913年、英文詩集『ギーターンジャリ』によりノーベル賞を受賞。アジアのみならず欧州以外で初の受賞であった。神秘的で純粋な詩精神にあふれ、愛と情熱のほとばしる詩や歌を母語ベンガル語で数多くあらわす。80年余の生涯をつうじてインドは苦難と混沌の時代にあり、人びとが真に自立の精神に覚醒することを願った。1901年に創設した全人教育を目ざす学校で、自ら母語の教科書をつくるなど革新的で創造的な教育を行った。また農民に深い共感をもち農村の貧困の克服に心をくだいて農村再建の礎としての教育も開始した。後年、学校は国立大学 Viswa-Bharati に発展する。信念にそって果敢に行動する詩人であったことは重要である。第一義的に詩人であり、同時に音楽家であった。作詞作曲した歌の数は二千とも三千ともいわれる。ベンガルの村を遍歴するバウルの歌を愛し、歌はベンガルの心を代表すると考えて、その伝承旋律をしばしば自作歌にもちいた。インドとバングラデシュ両国の国歌はタゴールの作詞作曲である。
内山眞理子 [うちやま まりこ]
1949年、山口県生まれ。
高校時代に山室静訳『タゴール詩集』を読み、インドとベンガルに関心をもつ。日本女子大学文学部卒業後の1972〜1973年、インド西ベンガル州シャンティニケトンにある Viswa-Bharati (通称タゴール国際大学)哲学研究科にてタゴール思想を学ぶ。翻訳書に『ユニコーンを探して(サタジット・レイ小説集)』(筑摩書房)、『ベンガルの苦行者』『迷い鳥たち』『お母さま』(タゴール著、未知谷)ほか。著書に、ベンガルの吟遊詩人バウルを紹介した歌紀行『ベンガル夜想曲(愛の歌のありかへ)』(柘植書房新社)がある。山室静主宰「木の花」を継承する「野の風」(編集室、殿井博)同人。仙台市青葉区在住。
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