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そのころスイスは 第二次大戦中のスイス人作家の青春
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オットー・シュタイガー 著 / 高柳英子 訳
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四六判上製208頁 2,200円(税別)
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ISBN978-4-89642-407-2 C0098
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周辺諸国は戦争中だった。
中立国スイスはそのど真ん中に位置していた。イギリスはやろうと思えば……生命維持に重要な食料品や原料の輸入を簡単にとめてしまうことができただろう。時に実際、イギリスはそういうことをやっていたのである。そうした封鎖がまた解除されたりするのは、彼らがスイスの美しい山並みのことを思い出したからではなくて、スイスが譲歩したからであった…… (本文より)
永世中立国という言葉から、なんとなく平和国家ではないかと想像しているが、その中立というあやうい立場が、ヨーロッパが砲火に見舞われた第二次大戦期に、いかにして守られたのか、ドイツ語圏、フランス語圏など、同じ国民が地域によって言語を異にしている国家で、人々は何を考え、どう暮らしてきたのか、となると、これをテーマにした実話も小説も、私たちはほとんど持っていない。シュタイガーは本書で、一スイス人の戦時下の思いを繊細に描いてみせる。ある時はしんみりと、ある時はユーモアたっぷりに、またある時は怒りをこめて。戦争という巨大な不条理の世界でうごめく、一個の人間という極小の存在の思いを、これほど的確に活字に掬い上げた文学が、これまであっただろうか。
(「訳者あとがき」より)
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目 次
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頁
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巴里の屋根の下で
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9
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ユールヒェン
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39
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しかたがないさ 戦争なんだ
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61
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なりそこないの兵士
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75
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これより反撃あり
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85
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「レシュティ」と韻を踏む
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107
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空襲警報
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123
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思い出のフォンデュ
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129
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ドイツ、敗戦直後
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149
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二十台の学習机
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165
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訳者あとがき
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203
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オットー・シュタイガー [Otto Steiger] (1909―2005)
スイス生まれ、30年代からパリに暮らし、36年帰国後ラジオ・テレビのキャスターとなる。一方で20代半ば頃から著作を発表し始め、42年に長篇小説でグーテンベルグ・ブックギルド特別賞を受賞。以来、専業作家の道へ。推理小説、脚本、エッセー、旅行記、教科書副読本など著作多数。また児童文学者としても高い評価を得た。2009年には生誕100年を記念して復刻版が続々出版された。日本でも1988年に出た『泥棒をつかまえろ!』が童話館から再版。他に『海が死んだ日』(リブリオ出版)『フリー・スクール』(リブリオ出版)『Nr. 16 47 12』(未知谷)いずれも高柳英子訳、がある。
高柳英子 [たかやなぎ えいこ]
1948年、福岡生まれ、ドイツ語塾主宰、ドイツ児童文学翻訳家。シュタイガー作品の他、コルドン『ビンのなかの手紙』、ヴァルスツェック『人形遣いの謎』、シュタイガー『Nr. 16 47 12』など翻訳書多数。2006年『正しい猫の数え方』で作家デビュー。『立派な飼い猫になる方法』『本当の猫好き』(いずれも未知谷)と共に猫三部作が完結。
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