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スフィンクス・ステーキ ミュノーナ短篇集
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ミュノーナ 著 / 鈴木芳子 訳・解説
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四六判192頁 1,800円(税別)
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ISBN4-89642-127-2 C0097
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箍(たが)を外された少年がどこ迄も突き進むように
ミュノーナの逸脱には限度がない、節度はある
彼自身が「大胆にも申し上げますと、私は目下カントと道化のジンテーゼ(統合)を体現した唯一の人間です」と書いているように、彼の作品は人生の戯画を飄々たる笑いに昇華させた彩り豊かなショート・ショートで、物語の底にユーモアと哀しみと苦渋が漂う。論理的知性と奇抜なアイデア、哲学者=作家としての遊び心が一体化し、思わず読み手を奇想の世界に引き込む。型破りな発想、意表をつく展開、軽妙な言語遊戯、抑制のきいたウィット、明敏な批判精神、そのカントと道化の統合ぶりは同時代の表現主義者やダダイストたちに多大なる影響を与え、シュールレアリスムの先駆者としても高く評価されている。作家で批評家のクルト・トゥホルスキーは「ミュノーナの作品はただの滑稽、コミックではない。思わず吹き出す抱腹絶倒ものだ。みごとに構築された宇宙のあらゆる階段を散策する楽しみがある」と評した。(「解説」より)
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目 次
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頁
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やさしい巨人
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7
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へべれけ花と幽体離脱したオットカール
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10
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肺のパラダイス
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19
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雲が雨を上方に降らせるとき
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26
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息子
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30
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老いた未亡人
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35
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老いた俳優ミドリギさんのクリスマス
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39
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性格音楽――毛のお話
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44
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ローザ、警官の美しい妻
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48
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ゲーテ蓄音機――ある愛の物語
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54
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不思議な卵
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77
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鼻持ちならない鼻
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86
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道しるべのネグリジェ
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91
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アモールの新床
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102
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スフィンクス・ステーキ
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114
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謎の一団
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122
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誘拐
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127
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合体
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138
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永遠に美しく……
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157
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うちのパパとオルレアンの乙女
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165
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ミュノーナ百歳の誕生日
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170
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解説
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177
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年譜
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186
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ミュノーナ [Mynona]
本名ザロモ・フリートレンダー。哲学者で作家。1871年ゴランチュ(ポーゼン)にユダヤ人医師の長男として生まれる。初め医学を専攻していたが、哲学に転じ、1902年ショーペンハウアーの位置づけ並びにカント「純粋理性批判」の認識論的基礎に関する試論で学位取得。哲学の主著に『創造的中立』『フリードリヒ・ニーチェ』。ベルリンでミュノーナ、匿名(Anonym)のアナグラムの筆名で詩や短篇を発表、ダダイストたるバーダーやハウスマンとともに雑誌『地上1915年』を計画、シュティルナーの個人主義を旗印にした雑誌『唯一者』刊行。1933年パリに亡命、闘病生活の後1946年パリに客死。「カントと道化のジンテーゼ(統合)」を自認するフリートレンダー/ミュノーナはアヴァンギャルド文学の寵児といえる。
鈴木芳子 [すずき よしこ]
1987年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。ドイツ文学専攻・翻訳家。1999年ゲーテ・エッセイコンクール受賞(ドイツ語)。訳書にフォイトヒトヴァンガー『宮廷画家ゴヤ』(エディションq)、ヒュルゼンベック編著『ダダ大全』、カール・アインシュタイン『ベビュカン』『黒人彫刻』(いずれも未知谷)他がある。『ベビュカン』によって2004年マックス・ダウテンダイ(日独翻訳)賞受賞。
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