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ベビュカン あるいは奇蹟のディレッタントたち
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カール・アインシュタイン 著/鈴木芳子 訳・解説
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四六判160頁 1,600円(税別)
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ISBN4-89642-091-8 C0097
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1912年初出のキュビズム小説
ベビュカンとは主人公の名前だが +mannequin 愚かな人体模型、+bouquin 幼児期停滞現象、be-buqin 空の甕→非合理性→能なし等由来に諸説がある。内省的な彼の内・外に起こる目眩めく世界を多面的に描写した作品。
120頁の掌篇ながら19の章に分けられ、ロマン主義や象徴派といった芸術論、プラトン主義やカント批判といった哲学論が交わされる一方、鏡にまつわる事件を契機にホラー映画さながら、町中に殺戮行為が蔓延する。
崇高と卑俗の変転、形而上学と道化芝居の交錯、全篇を貫く知的諧謔に同時代の表現主義者やダダイスト達から熱狂的支持を受けた現代そのものの作品だが、一時期は忘れられていた。しかし近年、ジョイスの言語遊戯やベケットの不条理劇の魁として再評価され、2000年にはドイツでリロ・マンゲルスドルフ監督によって映画化された。詳細解説付、本邦初訳。2004年、マックス・ダウテンダイ賞受賞。 ⇒[書評]
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目 次
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頁
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第1章 「母さんの霊に会いたくない?」
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7
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第2章 ベビュカンはクッションの……
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15
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第3章 〈カーテンの物語〉
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20
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第4章 数週間前からずっと……
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24
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第5章 ウィーン風の籐椅子が……
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29
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第6章 オイフェーミアの帽子の……
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35
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第7章 酒場には三つのアーク灯が……
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44
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第8章 激しく雨の降る夜通し……
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49
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第9章 当然ながら飛翔は終わり……
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55
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第10章 互いに知らぬ者どうし……
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61
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第11章 交尾中のつがいのサルの……
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64
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第12章 ベビュカンは誰にも……
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73
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第13章 星々がお決まりのアーク灯の……
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80
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第14章 修道院の前では、男が……
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85
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第15章 ベビュカンは次の晩……
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92
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第16章 ベビュカンはぎこちなく……
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100
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第17章 オイフェーミアがベビュカンを……
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104
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第18章 「僕らはベームを埋葬し……
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110
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第19章 最後の三夜の報告
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112
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解説
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117
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参考文献
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155
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カール・アインシュタイン
1885年ノイヴィート生まれ、ユダヤ系。ベルリンで美術史・哲学を学び、小説家・美術史家・批評家として活躍。スパルタクス団蜂起の際にはバリケードに立つ。1928年パリに移住。1936年スペイン市民戦争に反ファシズムの闘士として参戦。1940年ドイツ軍によるフランス占領後、ゲシュタポの手に渡されるのを拒みポー川に投身自殺。代表作に本書『ベビュカン』の他、『不屈のプラトン主義者』『悪しき福音』。ヘルツフェルデ兄弟やグロスとともにダダ雑誌〈破産〉〈糞まじめ〉を編集。『黒人彫刻』『二十世紀の芸術』はモダニズム芸術の基本書として評価が高い。
鈴木芳子 [すずき よしこ]
1987年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。ドイツ文学専攻・翻訳家。1999年ゲーテ・エッセイコンクール受賞(ドイツ語)。訳書にフリッツ『エロチックな反乱』(筑摩書房、共訳)、メラー『運河沿いのフェルメールの家』、ペルッツ『レオナルドのユダ』、カシュニッツ『ギュスターヴ・クールベ』(いずれもクインテッセンス出版)、ヒュルゼンベック編『ダダ大全』(未知谷)他。
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