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処女たち イレーヌ・ネミロフスキー短篇集
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イレーヌ・ネミロフスキー 著 / 芝盛行 訳
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四六判上製256頁 2,500円(税別)
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ISBN978-4-89642-522-2 C0097
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本書所収の作品は、いずれもその逼迫と緊張の中で執筆されており、どの登場人物の内面にも、不安と危機感が濃厚に滲んでいる。(中略)彼女は、正に豊富に「書くこと」を持っていた作家――Woman of Letters――であり、社会や人間に対する信頼が揺らぎ、死の危険が迫っても、「書くこと」「書いたもの」に対する信頼だけは、最後まで失わなかったようである。狂気の時代にあって、「燃え滾る溶岩の上で書いている」(一九四二 作家ノート)状態でも、作品自体は破綻無く、端正な佇まいを保っているのも驚異的である。「いつか戦争は終わり、歴史的な箇所の全てが色あせる。十年後の読者も百年後の読者も同じように引きつけられるよう、書かなければならない」(同)と書き記したイレーヌは、希望を信じないように、絶望も信じない冷徹の人だった。
(「訳者あとがき」より)
「これがいずれもハズレなしのおもしろさなのである。スリルありサスペンスあり、家族の物語あり熱烈にして悲劇的な恋愛あり、戦争に革命、犯罪に暗殺に民族問題もありながら、アイロニカルなユーモアもほの見える、なんとも豊かな物語ばかり。〔……〕苛烈な日々に彼女は何を思ってこの物語を綴ったのか。物語とはなにか、「物語る」とはいかなる行為なのかを思わせられる一冊である」(評者=土方正志さん、読売新聞2017年4月30日号)
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目 次
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頁
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日曜日
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5
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血の絆
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31
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友よ!
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93
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ドンファンの妻
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111
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目撃者
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143
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アイノ
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163
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魔法
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181
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ローズ氏
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203
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処女たち
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227
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訳者あとがき
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247
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イレーヌ・ネミロフスキー [Irene Nemirovsky] (1903〜1942)
ロシア帝国キエフ生まれ。革命時パリに亡命。1929年「ダヴィッド・ゴルデル」で文壇デビュー。大評判を呼び、アンリ・ド・レニエらから絶讃を浴びた。このデビュー作はジュリアン・デュヴィヴィエによって映画化、彼にとっての第一回トーキー作品でもある。34年、ナチスドイツの侵攻によりユダヤ人迫害が強まり、以降、危機の中で長篇小説を次々に執筆するも、42年にアウシュヴィッツ収容所にて死去。2004年、遺品から発見された未完の大作「フランス組曲」が刊行され、約40ヶ国で翻訳、世界中で大きな反響を巻き起こし、現在も旧作の再版や未発表作の刊行が続いている。
芝盛行 [しば もりゆき]
1950年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。訳業に、『秋の雪』『ダヴィッド・ゴルデル』『クリロフ事件』『この世の富』『アダ』『血の熱』(イレーヌ・ネミロフスキー、未知谷)、ジョン・アップダイク「ザ・プロ」、P. G. ウッドハウス「カスバートの一撃」、リング・ラードナー「ミスター・フリスビー」、J. K. バングス「幻のカード」、イーサン・ケイニン「私達がお互いを知る年」を紹介した英米ゴルフ小説ベスト5(「新潮」2000年)。2008年以降、イレーヌ・ネミロフスキーの翻訳に取り組む。
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