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『土』の言霊 歌人節のオノマトペ
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山形洋一 著
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四六判上製320頁 3,000円(税別)
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ISBN978-4-89642-368-6 C0095
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『土』に登場するオノマトペの数、計四三八種!
日本文学史上類を見ない「長篇散文詩」として『土』を読みなおし
オノマトペに秘められた 愛と苦と戯れを深く味わう試み
読解編:オノマトペの生態学
音韻編:オノマトペの形態学
歴史編:和語オノマトペ進化論
和歌編:詩語としてのオノマトペ
語彙編:オノマトペの標本棚
・概念に結びつかないオノマトペを、試みに「パトスの言語」と呼んでみる。
・節は『土』執筆の前年、「寫生斷片」に、「余は天然を酷愛す」と書いた、その「酷愛」を「パッション」と訳せば、節の心に近づけるのではないか。
・パトス・パッションの文学を味読するのに、パトスの言語であるオノマトペが鍵になるのではないか。
これらをヒントに『土』を読みなおしてみると、たしかにお品の病苦や、卯平の老衰などの描写で、オノマトペが活きていることが確認できるが、与吉の成長やおつぎの抑圧された性にも、音喩の工夫が見られる。つまりオノマトペはパトスだけでなく、エロスの言語でもあり、その両義性こそ「酷愛」と重なる。
だが「酷愛」にとらわれすぎて、オノマトペがもつ「あそび」の側面を見落としてもつまらない。『土』のオノマトペの相対位置をよく見ると、あちこちにことば遊びが隠されているのである。
(「はじめに」より)
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目 次
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頁
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はじめに
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1
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読解編 音喩で味わう『土』の細部と構造
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13
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勘次 貧しい小作人の典型
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13
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卯平 老いの僻み
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24
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おつぎ おぼこな主婦
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33
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お品 永遠に女性的なるもの
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45
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与吉 誇張された孤独
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51
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土くさい脇役たち
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58
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散文詩のことばあそび
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67
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音韻編 オノマトペのリズムと音色
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89
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リズム
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90
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母音
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96
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子音
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103
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方言オノマトペ
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104
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歴史編 『土』以前の近代文学における和語オノマトペ
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107
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一八八二(明治一五)年頃 三遊亭円朝作『真景累ヶ淵』
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109
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一八八八(明治二一)年 二葉亭四迷訳「あひゞき」
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111
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一八九八(明治三一)年 国木田独歩「(今の)武蔵野」
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117
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一九〇〇(明治三三)年 徳富蘆花「自然と人生」
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120
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一九〇〇(明治三三)年 言文一致唱歌
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122
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一九〇六(明治三九)年 島崎藤村『破戒』
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124
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一九〇八(明治四一)年 伊藤左千夫『隣の嫁』
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130
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一九〇八(明治四一)年 高浜虚子「俳諧師」「続俳諧師」
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136
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一九〇九(明治四二)年 田山花袋『田舎教師』
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139
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一九一〇(明治四三)年 石川啄木歌集『一握の砂』
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145
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和歌編 歌の中のオノマトペ
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153
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和歌の句法とオノマトペのリズム
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154
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和歌のオノマトペ事例
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156
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語彙編 『土』のオノマトペ集
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177
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語基一音節
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178
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語基二音節
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210
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その他の形、方言オノマトペを含む
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304
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参考文献
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311
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あとがき
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317
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山形洋一 [やまがた よういち]
1946年大阪生まれ。東京大学農学部卒、農学博士(応用昆虫学)。71年日本のNGOの手伝いでネパール滞在。72年インドを三等列車で周遊。インド復帰を夢見て国際協力の道を選び、国際協力機構(JICA)や世界保健機関(WHO)の専門家として中米、アフリカで熱帯病を媒介する昆虫の駆除法開発に携わる。1991年よりJICAの国際協力専門員。2011年よりJICAの主要感染症対策プロジェクトリーダーとしてミャンマー滞在。主著に、『長塚節「土」の世界』(未知谷)、『面白く学ぶネパール語』(国際語学社)、共著に林俊行編『国際協力専門員 技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡』(新評論)がある。
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