未知谷の刊行物【国内文学】
節の歳時記
農村歌人長塚節の自然観
山形洋一 著
四六判上製256頁 2,800円(税別)
ISBN978-4-89642-450-8 C0095
余は天然を酷愛す。故に余が製作は常に天然と相離るゝこと能はず
ありきたりの草や木でもつねに新鮮な目で観察する節の態度は
文学者の域をこえて博物学者(ナチュラリスト)に近い。
節の短歌を歌材ごとに分類、着眼点や表現法を時代順に追い
泥臭い素材と洗練された表現が織りなす長塚節の風景
その抒情歌としての深まりを味わう一書。
目 次
頁
まえがき
1
春の憂悶
ハンノキの花 短歌連作の構造
13
カエル 田んぼの応援団
23
カエルを罵る
31
ハハコグサ 母の手触り
35
カシ落ち葉 新生の代償
39
クヌギの落ちない枯葉 性へのためらい
46
ヤマブキとオダマキ マザコンから悲恋へ
57
病中吟のカエル
66
ノイバラ 好きで苦手な季節
71
夏の旅景色
西の旅路のマツ 教養の旅から羈旅へ
81
平潟のマツ 民俗写生の歌と散文
87
博多のマツ セミも鳴かぬ夏枯れ
94
単衣 最後の夏のよそおい
98
月見草とキリギリス 「鍼」の詠風
105
病院のアサガオ日記
114
秋の田園生態
草紅葉 地味な歌材の発掘
121
月夜のソバの花 夕闇に浮かぶ白
125
野菊の名はヨメナ 自然科学者の態度
135
モロコシの挽歌 デジャヴュー
142
「憶友歌」 戦争と写生
147
茄子古幹 百姓共観を詠う
156
エノコログサ 写生法開眼
166
刈り干す風景 「羈旅雑咏」の民謡調
172
霧とびわたる 動詞止めの躍動感
180
「濃霧の歌」 異界訪問
184
二ざまに秋の空見つつ 存在の不安?
189
ツユクサ 多重なシンボル
194
トウナス=カボチャ 真面目で剽軽な自画像
199
冬の病中吟
根岸養生院のサザンカ 血にかも散る
209
杉はいぶせし 旧家の重圧
215
黄菊とザボン 最晩年の色彩
226
こぼれ松葉とサザンカ 最晩年の白
233
シカの墓碑銘
239
あとがき
245
参考文献
248
山形洋一 [やまがた よういち]
1946年大阪生まれ、東京大学農学部卒、農学博士(応用昆虫学)。71年日本のNGOの手伝いでネパール滞在。以後世界保健機関(WHO)専門家としてブルキナファソ、トーゴ赴任、国際協力機構(JICA)専門家としてグアテマラ、タンザニア、インド、ミャンマー赴任、熱帯病媒介昆虫の駆除、リプロダクティブ・ヘルス改善に従事。途上国における業務の参考として日本の農村貧困の記録に興味を持ち、長塚節の研究をはじめる。2013年よりフリー。主著に『
長塚節「土」の世界
』『
『土』の言霊
』(未知谷)、『面白く学ぶネパール語』(国際語学社)、共著に林俊之編『国際協力専門員』(新評論)がある。
小社刊の
山形洋一
の著作物
[
長塚節「土」の世界
写生派歌人の長篇小説による明治農村百科
]
[
『土』の言霊
歌人節のオノマトペ
]
[
長塚節「羇旅雑咏」
現場で味わう136首
]
[
慕倣
みっしりずしり:長塚節と藤沢周平
]
[
長塚節「鍼の如く」
旅する病歌人の滑稽と鄙ぶり
]
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