未知谷の刊行物【紀行】



 
サンクト・ペテルブルク断章
遺伝研究者のロシア滞在記

山田実 著
四六判256頁 2,200円(税別)
ISBN4-89642-107-8 C0095



2003年の建都300周年以来サンクト・ペテルブルクは日本人観光客が殺到している。1997年から在外研究員として三年の滞在を終えた後も、委託研究員として現在迄、年に約四ヶ月滞在し続ける著者はペテルブルクを知悉している。音楽会、バレエ、オペラ、エルミタージュ、ロシア美術館、文学散歩、離宮の散策から市場の買物そして専門の植物遺伝にもちょっと触れた古都案内記。収録図版100余点。
 
疑心暗鬼、疑がう心は鬼を見せると言う。未知が恐怖に連なる人間心理を言い当てた言葉と言って良い。ロシアに関しては、70年のソビエト体制もあって、われわれ日本人にとって未知なるものが余りに多い。本書の著者ドクター山田は、植物の遺伝と育種を専門とする研究者だが、植物遺伝学の共同研究のため、ロシアの古都サンクト・ペテルブルクに3年間暮らした。彼は、同じ大地を踏み、食し、同じ空気を吸うことで感じた同じ人間としてのロシアの人々、そして空間を異にすることによる文化の違い、専門の研究とは別に、肌で感じたロシアの人と空気とを、極東のわれわれに伝える使命を覚えたようだ。本書によってそのことは充分成果を上げたと言える。本書を読み終えた方々は、ロシアが、少なくともサンクト・ペテルブルクが、いくばくか身近なものとなるに違いない。


目  次

はじめに――なぜ書く?

街を歩けば(人と言葉)
 
 あなたはなに人?
ピーテルの街角で/モスクワの寺院で/日本人であること/これからどうする?
13 
 白人の街ピーテル
日本語の通訳/親日家の一族/忘れられない研究者/文化交流よりもまず資金/ナンバー・トゥーの重み/血より濃い生活の場
19 
 五百万人のなかの二百余人
ピーテルにのめり込む/ロシア語で啖呵を切った快女/国際派の板前さん/日本語学級で/多才な総領事館/夫婦とも大先輩/実直さといい加減さ
32 
 わが運転手、サーシャ君
サーシャ君を雇う/船造りに血道を上げる/予言が的中した遠出/自由自在の規則
47 
 ピーテルとハルビン
シベリア鉄道が結ぶ縁/ピーテルに住むハルビンゆかりの人々/ある農学者の軌跡、バビロフ研とのつながり/ハルビンとハスの種子の論文
54 
 冬宮とエルミタージュ、ロシア美術館
エルミタージュ美術館/エルミタージュの日本/ロシアのエスプリ
60 
食う寝るところに住むところ(ピーテルの暮し)
 
 北緯六十度の夏と冬
ピーテルのある場所/高緯度であること/白夜は寝不足/夜長の憂愁とその楽しい過ごし方/「桜の園」を楽しむ
68 
 ジャガイモ、パン、それに米と玄ソバ
ジャガイモは亜寒帯産がおいしい/パンの美味しさは風土に根ざす/米の嗜好は勝手なもの/ソバは生そばや藪そばでない
81 
 ウォトカとワイン、そしてビール
ウォトカの効用/ワインの飲み方/ビールは清涼飲料水/酒と政治
96 
 一・五米ドルと六十米ドルの食事
米ドルが基準通貨なのか/一・五米ドルの昼食/六十米ドルの正餐/食を支える農の意味
106 
 果物、野菜、それに魚と肉
食品の仕入れ方/果物は選り取り見取り/野菜の種類は豊富/生魚、冷凍魚、それに燻製/牛肉、豚肉、鶏肉それに卵
116 
なぜ耐えるのか(ロシア人の想い)
 
 ピーテル、ここはロシアであってロシアでない
まずははじめに知り合うこと/ピョートル大帝以来の西への窓口/ロシアの大地とロシア人
131 
 飢えても資源は食さず
遺伝資源を求めて/生命と種子を引き換えた/心傷む記念碑
137 
 文化遺産とソビエト時代の建物
郊外の大アパート群とフルシチョフカ/旧市街の文化遺産/アパートは資産の一部
147 
 19世紀と21世紀
使えればいい/Y2K問題/基本動作で満足
154 
心の安らぎ(主義と信仰、芸術の世界)
 
 ラスコーリニコフとアカーキィ・アカキエヴィチのかげ
見飽きない街並み/センナヤ広場の周りで/引っ越し魔のドストエーフスキー/ロシア正教とロシア人/街に散らばっていたロシア正教/ゴーゴリの眼差し
162 
 「展覧会の絵」と九百日の封鎖
百数十年眠っていた原画/滅多に捨てない
176 
 ロマノフ王朝の遺産
比べようもない遺産/パヴロフスク宮殿と庭/廃墟の美
181 
 グリンカ、チャイコフスキーと五人組、それにショスタコーヴィチ
気持ちの揺らぐ音/芸術家たちの墓標/グリンカ/チャイコフスキー/五人組/ショスタコーヴィチ/九〇〇日封鎖のトラウマ
188 
 レーピンの絵、ロシア正教会のイコン
帝政期の遺産/レーピンとその仲間/傍観者の感想/信心の現われ方/イコン画とその周辺
208 
七十年の遺産(ソビエト体制が残したもの)
 
 冷戦と冷戦以後
冷戦下の往来/立ち入り禁止が解けて
222 
 建て前と本音
貴族気質の社会主義/制度運営の妙味=その一/以心伝心の処理(制度運営の妙味=その二)/公私の混同、役得の世界/遺産の底深さ
226 
 商売は一日にしてならず
客が遠慮する/売り子の教育は客次第/顧客はアミーゴ/いつまで続く親方赤旗
235 
 感性と感情または勘定
ロシアの映画/感性をよび覚ます映像/感情を支える勘定/研究するには金が要る
241 
あとがき――なぜ書いた?
247 

山田実 [やまだ みのる]
1932年東京小岩生まれ。
1957年東大農学部卒。農林省に入って初めは稲栽培の研究、その後トウモロコシの遺伝研究に進み、トウモロコシの花粉競争に雑種強勢が現われることを見出し、日本育種学会賞。1990年代にはゲノム研究に係わる。1997年から3年間科学技術振興事業団上級研究員として、ロシアのバビロフ名称植物生産研究所客員研究員でサンクト・ペテルブルクに滞在。その後も国の委託研究のために年に二度訪問滞在している。農学博士。

小社刊の山田実の著作物
[サンクト・ペテルブルクの異邦人 芸術と文化、歌と生活]


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サンクト・ペテルブルク断章
遺伝研究者のロシア滞在記
山田実 著
2,200円(税別)

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