未知谷の刊行物【国内文学】



 
上海物語 あるいはゾルゲ少年探偵団
小中陽太郎 著
四六判上製256頁 2,500円(税別)
ISBN978-4-89642-515-4 C0093



老人は夢を見、若者は幻を見る(ヨエル記)
 
時は1930年代、戦火迫る謀略の上海、英、日、中、ソ、5人の少年少女が運命の糸に操られつつ、繰り返す再会と別離の物語。いずれも故郷を知らず、戦乱の雲の下、明るく生きてゆく、やがて星移り、時変わり、平和の代わりにテロがきた。国境とは、国家とは、難民とは、友情とは、作家と平和運動の葛藤を問いつつ20世紀を華麗に生きた少年たち、しかし時代は21世紀にむかいまっしぐらに破滅へ――
戦前戦中の上海体験をもとに、脱走兵救援活動、ペンクラブの作家たちとの苦闘、中露の最新の未発表文書をとりこみ、年代、実名、入り混じり、SF・映画・現代詩に紛れ込み、イマジネーションとエビデンスの雲海を行く、「三銃士」か「百年の孤独」か、新形式のハイパー・スパイ小説。


目  次

プロローグ 亜細亜の曙

第一部 夢の夢なるかな
11 
第一章 史上最年少のスパイ
dancer at Astria Hotel 22/ガーデンブリッジの衝突 25/アマースト・ストリート 29/内山書店物語 35/塚本助太郎と豊田佐吉 38/ユダヤ難民収容所 42
12 
第二章 ZG(時代精神)
尾崎の血統は年上女 50/驚愕の周恩来登場 58
48 
第三章 スパイのリクルート先
銀座教会 66/キャンプ・シュワッブ 69/穏田の洋裁師 70/尾崎の快諾 75
66 
第四章 三流ドイツバーの女
コミンテルンの巡察使 82/ハウスワイフかオンリーか、仁義なきスパイ 88/ヴケリッチ 89/見逃された無線機の不思議 99/西園寺公一事務所 100/窃視の連鎖 104/逮捕の朝、カラスの大群 107
79 
第五章 開戦、三人三様の砲撃
新高山の厨子王 122/海女 さらば大洋丸 128/大洋丸の事務長夫人 134/処刑 135/原子爆弾 137/グッバイ・ナニー 139
112 
intermezzo 戦後史の闇
ウイロビーの謀略 144
143 
第二部 空の空なるかな
151 
第一章 クラッシュ
空へ 152/妥女ホテルの悦楽 155/後夜の睦言 159/数寄屋橋のハンスト 166/スパイは誰だ 170/カデナ 175/人斬り五郎 178/ハノイへ 180/ソ連平和委員会と蝶ザメ 184
152 
第二章 パリの白昼夢
Help Garcia 187/ヴァンドーム広場に沿って、シャレードの亡霊 200/ジェフロア小路 208/ゴラン高原 215/セルビア大使館の哀悼的想起 218
187 
終章 激突
帰れ、Broadway mansion かくも長き不在 227
227 
引用〈参考〉文献リスト
235 
あとがき
251 

小中陽太郎 [こなか ようたろう]
1934年 神戸生まれ
1939年 銀行員の父の転勤で、上海へ
1941年 上海第5国民学校入学
1943年 病弱で母と帰国
1958年 東京大学仏文科卒、NHK入局
1962年 小田実『しょうちゅうとゴム』演出
1964年 東京オリンピックの時退職
1965年 ベ平連(ベトナムに平和を! 市民連合)結成に参加
1967年 (ジャテック脱走兵援助)
以降、執筆、市民運動、日本ペンクラブ理事。
1968年 野坂昭如、生島治郎、五木寛之らと日本ペンクラブ理事、尾崎秀樹会長を常任理事として支える(のち専務)。バルセロナ、カラカス大会などの日本代表
1983〜84年 フルブライト交換教授
日本アジア・アフリカ作家会議事務局長、アジアキリスト教協議会(CCA議長)
著書 『天誅組始末記』『王国の芸人たち』『私の中のベトナム戦争』『小説内申書裁判』『青春の夢、小栗風葉と小栗喬太郎』『ラメール母』『翔べよ源内』(第1回野村胡堂文学賞)
翻訳 『エヴァの日記』(エヴァ・フォレスト)、『蟻』(ベルナール・ウエルベル)


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上海物語 あるいはゾルゲ少年探偵団
小中陽太郎 著
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