未知谷の刊行物【国内文学】



 
史伝 鎌倉源家北条記
山口俊章 著
四六判上製576頁 7,000円(税別)
ISBN978-4-89642-278-8 C0021



武士のエートスに照らされる日本人の心性
 
鎌倉時代に始まる武士の時代
ここに日本という国の骨格、文化の形と心、
武士道を鑑とする倫理観が形成された――
政治の首都を東国へ、実権を朝廷・公家から武家へ移し、
約140年に及んだ鎌倉幕府――
頼朝登場から源平合戦、執権北条氏、国難元寇、
後醍醐天皇の倒幕計画、新田義貞の挙兵と幕府滅亡まで、
日本史上、濃密長大な人間ドラマを通して
現在に通底する水脈を探る
 
「執筆中、私の想念を巡りに巡った思いは、何よりも、これが七、八百年もの大昔のこととは思われない親近感であった。ここに生きる人びとは、みな血の通う人間であって、人間らしい無常な生き様を示しつつ、この国の歴史に関わり死んでいった。鎌倉時代は新しい人間、思想、また新しい日本を創出した変革の時代であった。
滅亡した平家一族を描く『平家物語』は、鎌倉時代に成った軍記物語の白眉であるが、源氏一族については、一冊の『源家物語』というものが存在しない。本書の目的の第一は、鎌倉源家三代の史伝を構築すること、いわば『鎌倉源家物語』への執心である。目的の第二は、北条政子の存在によって北条家が幕府の実権を掌握するにいたった経緯、その一族と時代を今に甦らせる『鎌倉北条物語』の試みである。
併せて史伝『鎌倉源家北条記』と題する」(「あとがき」より)


目  次

序 鎌倉時代の政治文化

第一部 前期――源氏の時代
19 
第一章 源平の盛衰
1 源平の宿敵史 20/2 頼朝誕生の頃 23/3 頼朝初陣 27/4 平治の乱 30/5 父子の別離 34/6 逃避行 37/7 頼朝捕わる 40/8 助命・流罪 44/9 伊豆配流 47/10 伊豆の頼朝 51/11 頼朝と伊豆の女人 54/12 政子、頼朝に走る 58/13 頼朝挙兵まで 61
20 
第二章 鎌倉幕府創建
1 以仁王と源頼政 65/2 頼朝決起 68/3 治承の内乱 72/4 安房へ逃れる 75/5 関東経略 79/6 鎌倉へ 82/7 戦いと造営と 86/8 東国政権の確立 89/9 平家都落ち 93/10 義経初陣 96/11 一の谷合戦 100/12 戦の光と陰 104/13 屋島合戦 107/14 平家滅亡 111
65 
第三章 頼朝の時代
1 京と鎌倉 115/2 腰越状 118/3 頼朝追討から義経追討へ 122/4 義経迷走 125/5 静哀恋 129/6 武者の世の女性たち 132/7 義経追跡と守護・地頭 136/8 頼朝・西行・秀衡 139/9 義経の最期 143/10 全国平定 146/11 頼朝上洛 150/12 征夷大将軍 153/13 富士の裾野の仇討ち 157/14 仇討ち余滴と将軍辞職 161/15 再上洛と大姫入内問題 164/16 頼家披露と京の政変 167/17 頼朝の死 171/18 沈勇の生涯と偉業 174
115 
第四章 頼家の時代
1 頼家後継 179/2 頼家乱行 182/3 母の戒め 186/4 梶原一族滅亡 189/5 束の間の征夷大将軍 192/6 阿野全成抹殺と発病 196/7 比企の乱 200/8 虚報による将軍更迭 203/9 修禅寺 207
179 
第五章 実朝の時代
1 実朝の婚姻 211/2 畠山一族敗滅 215/3 北条時政の失脚 219/4 執権北条義時 222/5 将軍歌人虚実の日々 226/6 黒い雲 230/7 沈黙の暗闘 233/8 和田合戦へ 237/9 和田一族族滅 240/10 和田合戦後日譚 244/11 唐船建造 248/12 破船 251/13 渡宋ならず 255/14 政子上洛と公暁のこと 258/15 将軍実朝暗殺 261/16 御首塚 265
211 
第二部 中期――北条氏の時代
271 
第一章 尼将軍・義時の時代
1 鎌倉と京 272/2 後鳥羽上皇 275/3 討幕の前哨戦 279/4 承久の乱 282/5 政子の声涙くだる 285/6 鎌倉軍出陣 289/7 三上皇配流 292/8 北条義時の死 296/9 伊賀氏の変 300/10 北条政子の死 303
272 
第二章 泰時の時代
1 守成時代へ 308/2 泰時の治世 312/3 執権政治 315/4 道理の世 319/5 御成敗式目 323/6 仁政・深玄の士 326/7 将軍頼経と執権経時 330/8 前将軍の悲憤 334
308 
第三章 時頼の時代
1 執権時頼と宮騒動 338/2 前将軍追放 342/3 宝治合戦へ 345/4 三浦一族滅亡 349/5 三浦氏滅亡の陰画 353/6 得宗専制の確立 356/7 幕府の宗教政策 360/8 五代将軍頼嗣解任 363/9 六代将軍宗尊親王 367/10 松下禅尼より時頼への文 370/11 時頼出家 374/12 神政政治 377/13 廻国伝説 381/14 謡曲『鉢の木』の周辺 384/15 禅宗布教の旅 388/16 日蓮の登場 391/17 『立正安国論』の波紋 395/18 日蓮の法難 398/19 北条時頼逝く 402/20 世代交代 406/21 将軍交代 409
338 
第三部 後期――国難の時代
415 
第一章 時宗と元寇
1 時宗の時代 416/2 モンゴルの嵐 419/3 高麗の使者来る 422/4 時宗執権となる 426/5 朝廷の返書ならず 429/6 外憂と内患 433/7 二月騒動 437/8 時宗の決意 440/9 異国警固番役 444/10 文永の役前夜 447/11 日蓮去り蒙古来たる 451/12 文永の役 454/13 元軍撤退 458/14 幕府の応戦態勢 461/15 異国征伐計画 466/16 再び元使を斬る 470/17 弘安の役前夜 473/18 弘安の役 477/19 時宗血書 480/20 時宗死す 484
416 
第二章 貞時の時代
1 十四歳執権 488/2 霜月騒動 492/3 霜月騒動から岩門合戦へ 496/4 平家の裔 499/5 将軍更迭 502/6 天皇暗殺未遂事件 506/7 平禅門の乱 509/8 貞時自立 513/9 貞時出家 517/10 貞時廻国説 520
488 
第三章 高時と幕府滅亡
1 最後の将軍と北条高時 525/2 高時執権と後醍醐践祚 529/3 天皇親政から正中の変へ 533/4 天皇御謀反と高時出家 536/5 元弘の乱 540/6 後醍醐天皇勢の反攻 544/7 鎌倉幕府滅亡 548
525 
あとがき
555 
主要参考文献
561 
鎌倉時代関連年表
568 

山口俊章 [やまぐち としあき]
1936年東京生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程修了。71―72年フランス留学、87年日本学術振興会よりフランス国立科学研究センター出向。元神戸大学大学院文化学研究科教授(フランス文学・思想、政治文化)。著書に『フランス1920年代――状況と文学』(中公新書)、『フランス1930年代――状況と文学』(日本エディタースクール出版部)、訳書にカステラン『バルカン 歴史と現在』(サイマル出版会)、コント『ヤルタ会談 世界の分割』(二玄社)ほか。


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