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故土津軽 超九十歳翁ふるさとを語る
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小野正文 著 / 清水典子 聞き書き
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四六判上製176頁 1,600円(税別)
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ISBN978-4-89642-194-1 C0095
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深い雪に鎖ざされた長い冬――
人々は心の裡で存分に飛翔する
文学や芸術を涵養する風土――
学都弘前の文化を象徴する老翁が
「人を喜ばせるのが何より好き」の
精神で十全に語る生きた文化史
「つがる」と口に出してみる。温かく、懐かしい響き。縁あって二十八年暮らした津軽は、私が生まれ育った場所ではありません。帰京することになったこの春「私の故郷はどこ?」と思いました。故郷とは「思い」のある場所、私の思いのある場所は津軽、弘前。そう感じています。津軽に教えられたのは自然への畏怖と感謝の気持ち、厳しい自然の中で逆らわずに生きることの大切さでした。ダイナミックにそして繊細に移ろう四季。地に足を着けて生きる人々。すべてが愛おしく思われました。鮮やかな自然の移ろいがそこに住む人々の感性を豊かに磨いているのでしょう。城下町弘前は茶道、華道、書、絵画、俳句、短歌、詩、陶芸、舞踊、音楽、さまざまな文化が花開いています。太宰治や寺山修司、高木恭造や葛西善蔵らが生きた時間が、この街には今も流れているように感じます。ご縁をいただき、青森の文化の象徴ともいうべき小野正文さんのお話を直接に聴く機会を得、小野さんの語る言葉により、太宰や恭造、今官一らが生き生きと動き出し、自分も一緒にそこにいたかのような錯覚を何度も覚えたものです。今、ゲラ刷りで読み返しますと、自分が書いたはずの文字を追っているにも拘らず、実際に私が耳にし、目にしたような思いが甦えりました。読者の方々もこの本のなかで、生きた太宰や高木恭造に出会うことができますように。 (「おわりに」より)
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目 次
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頁
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はじめに
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1
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太宰治記念館
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13
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『太宰治をどう読むか』再刊
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17
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五能線と太宰の思い出
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21
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祖父 小野忠造
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26
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ドナルド・キーンと太宰治
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33
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高木恭造とまるめろ(附録1)
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37
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イザベラ・バードと古き良き津軽
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45
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旧制弘高時代の太宰治
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51
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旧制高校の寮生活
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57
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悲願の甲子園凱歌(附録2)
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60
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「津軽」讃(附録3)
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67
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太宰と「津軽」
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78
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やせの大食い
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84
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わが友斎藤信也
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89
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破天荒な福士幸次郎
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92
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「北の文脈」
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96
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子供の頃の思い出
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104
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文学碑の建立に苦心
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108
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洋次郎の苦い思い出
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112
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一戸謙三の文学碑
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116
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弘前南高校(附録4)
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121
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苦労した法科の卒業
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129
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今官一との交流
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133
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女性は強い!
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139
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建部綾足会会長
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143
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唐牛敏世の波乱の人生
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148
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畏友宇南山惣三郎
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154
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聞き書きを振り返って
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160
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おわりに
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167
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小野正文 [おの まさふみ]
1913年青森県に生まれる。38年東京大学法学部を卒業。青森県立図書館長、県立弘前南高等学校長、青森中央短期大学教授、青森中央短期大学学長などを歴任。長年に亘る太宰治研究を評価され、2005年弘前大学から名誉博士号が授与された。
太宰治の同郷同学の友人として知られ、幅広い文学社会評論活動を行っている。
主な著書に『太宰治をどう読むか』『文学のある風景』『入門太宰治』『若きらとともに』『北の文脈』『太宰治その風土』などがある。
清水典子 [しみず のりこ]
神奈川県平塚市出身、元陸奥新報論説委員。現在はフリーのライター。著書に『私的に素敵・津軽の女性たち』『夢追い人』『童話の食卓へようこそ』等がある。
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