未知谷の刊行物【哲学・思想】



 
人間の美的関心考
――シラーによるカント批判の帰趨

長倉誠一 著
四六判上製336頁 3,000円(税別)
ISBN4-89642-084-5 C0010



深い海は動いているとき最も崇高に見え
澄んだ小川は静かに流れるときに美しい
 
カントの提示する美と崇高と道徳と、諸概念に対峙した詩人シラーは「自然も芸術作品もおよそ素晴らしいとされるものは皆、生き生きしている」と素朴な実感から思索を重ねた。詩人の確かな感性と辛苦の思索を礎として、先行するカントの諸概念と反省的に対比させつつ、最新の研究成果を踏まえ、シラーの提示した「美」の本質を簡明に解き明かす労作。
 
……本物と贋物の見分けがつかない者が美や崇高を論じても説得力はもち得ないし、実際、哲学者があれこれ分析的な整理を行なったものにはまがい物も混じり込みがちです。しかしシラーのような物事の本質を見抜く本物の詩人の眼は、ずばり真実を射抜きます。シラーの言説はそのような本物の詩人の洞察に基づいています。彼の思索は、意味や価値の混沌とした今日こそ、人間の最も素朴な感性である「美」の意識が重要な意味を持つことを再認識させてくれます。…… (あとがきより)


目  次

序章
一 シラーの評価10/二 ヘーゲルやガーダマーのシラー解釈の偏向11/三 シラー像の変更のために13/四 シラーの「自由」概念15/五 解題17

第一章 悲劇論と崇高――カント崇高論の受容
一 シラー悲劇論の源泉24/二 シラーの悲劇論の成立と崇高26/三 『悲劇芸術について』において35/四 『パテーティッシュなものについて』における悲劇論45/五 悲劇論の展開と崇高論50
23 
第二章 美と崇高――カント趣味論との対決
一 カントとシラーの、広義における美58/二 『カリアス書簡』における美68/三 『カリアス書簡』における崇高83/四 『優美と尊厳について』における美と崇高88/五 『人間の美的教育について』における問題点100/六 『人間の美的教育について』における衝動論から美の理念へ107/七 『人間の美的教育について』における「能動的規定可能性」あるいは「美的状態」126/八 『人間の美的教育について』における「美しい仮象の国」146/九 「現象における自由」の展開、と残された問題157
57 
第三章 道徳と、美および崇高――カント倫理学の批判
一 カント批判への美の関与168/二 『優美と尊厳について』におけるカント「厳格主義」批判170/三 カントの返答182/四 寸鉄詩をめぐって187/五 シラーのカント批判に関するブレラーゲ説190/六 一七九三年十二月三日付アオグステンブルク宛書簡195/七 一七九五・九六年の見解212/八 美的判断と道徳的判断との関係224
167 
第四章 自由と崇高――カント崇高論からの脱却
一 二つの崇高論の位置づけ242/二 第一崇高論での「理論的崇高」と「実践的崇高」244/三 第一崇高論での「観想的な崇高」と「パテーティッシュな崇高」261/四 精神的(moralisch)な意志の自由268/五 第一崇高論についてのド・マンの解釈270/六 第二崇高論における〈意志と道徳的[精神的]文化〉272/七 第二崇高論における〈美と崇高〉と自由281/八 第二崇高論における「デモーニッシュな自由」と「予防接種」289/九 美と崇高の統合問題296/十 第二崇高論の評価299
241 
終章――ニーチェの先駆者としてのシラー
307 
あとがき
317 
シラーの引用著作年譜325/戯曲年譜327
人名索引i
 

イマヌエル・カント
[Immanuel Kant]
1724-1804
ドイツの哲学者。合理論と経験論を統合した批判哲学を確立。物自体は不可知であると、認識の対象を現象に限定して理性の領域を設定した。『美と崇高の感情に関する考察』『判断力批判』『純粋理性批判』『実践理性批判』など古典的な哲学書が多数ある。
 
フリードリヒ・フォン・シラー
[Friedrich von Schiller]
1759-1805
ゲーテと並ぶドイツの国民詩人、哲学者。ベートーベンの第九交響曲合唱「歓喜の歌」の作詞も手掛ける。「群盗」で劇作家デビュー。レクラム文庫で一千万部を売った『ヴィルヘルム・テル』などベストセラーも多いが、歴史研究、生の喜びや生命感に溢れる美意識の探究に基く哲学・美学書もある。
 
長倉誠一 [ながくら せいいち]
1952年山形県生まれ。
中央大学文学部哲学科哲学専攻卒業。法政大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。
現在 武蔵・立正・法政・電気通信大学講師。
著訳書に『カント知識論の構制』1997年。『現代カント研究7 超越論的批判の理論』(共編著)1999年。『哲学の原点 ドイツからの提言』(共訳)1999年。その他共著として『現代カント研究8 自我の探究』2001年、などがある。


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――シラーによるカント批判の帰趨
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