未知谷の刊行物【海外文学】



 
ロープシン遺稿詩集
ロープシン 著 / 川崎浹 訳・解説
四六判上製176頁 1,600円(税別)
ISBN978-4-89642-320-4 C0098



「とても良い詩」「現代の若者に!」との声に応え、全篇改稿、新訳と詳細年譜による待望の再刊!
テロ集団の幹部サヴィンコフとして、人の生と死を極限まで見つめた作家ロープシンが、小説やドキュメンタリーでは語りきれなかった赤裸々な魂の言葉を詩形式に乗せた、易しいが深い作品。

 
これを書いたのはありきたりの詩人ではありません。したがってこの詩集もまた、それほどありふれたものではありません。……とにかく彼は自己のすべてを、悲劇的な鋭い刃を中心にした全生涯を写しだしているのです。この鋭い刃はつねにむきだしにされていますが、ただときおり生活と精神の複雑さにおおいかくされることがあります。どうやら彼の精神には、人間の精神にありうるすべてのみならず、極端な闇と光、弱さと強さのすべてがあるようです。……これらの作品のもつ恐ろしいほど鋭敏な触覚のまえには足を止めざるをえないだろうと思うのです。(ギッピゥス「序」より)
 
『ロープシン遺稿詩集』はニヒリストの赤裸々な告白の書ともいえる。最初は革命家テロリストに特有の懊悩だったものが、最後には普遍的な人間そのものの不条理性に達している。これらの詩を書きつけるとき、サヴィンコフにこれを公表する意図があったのかどうか。詩が無題だったということが、外からのさまざまな解釈を呼びこむ。
ギッピゥスらの編者によって、『ロープシン遺稿詩集』はサヴィンコフの死後十一年目の刊行となった。三十二〜四歳の間に書き残された作品である。テロリストとしての過激な前半の生涯に、作家デビューの華々しい後半をくわえ、さらに『ロープシン遺稿詩集』の浮上は、サヴィンコフ=ロープシンの生涯を閉じるにふさわしい象徴的なアリバイだと思われたが、そうはならなかった所に、この人物のスケールの大きさがある。(「解説」より)


目  次

序にかえて ギッピゥス

詩集I (一九一一〜一九一三年)
13 
 三韻句
14 
 闇の公爵
22 
 ヨハネの黙示録 第二五章
28 
 山なみにオリーブ
33 
 夕べの影
34 
 南で
38 
 ANGELUS
42 
 南国
44 
 おそまきの慰め
46 
 ちっちゃな緑色の
49 
 やつは 寝台に
50 
 電気火花
52 
詩集II 愛とワイン
55 
 床のおもちゃたち
56 
 ぼくに少しの優しさを
58 
 きみがグリークを弾くとき
60 
 怒りを知らぬ
62 
 彼女はぼくに
64 
 大きな手
66 
 マロニエの葉のざわめき
68 
 雪は汚い泥の塊に溶けて
70 
 高くひびく
72 
 当てにならぬ身振り
74 
 きみは去りながら
76 
 いつにかわらぬ唇
78 
 ぼくは墓地で石碑に
80 
 愛人にして妻
82 
 雨の矢
84 
 秋の小雨がけぶり
85 
 ぼくは疲れた
86 
 彼女は柩によこたわる
88 
 気のめいる響き
90 
詩集III 最終
93 
 ぼくはよろめき歩いた
94 
 ギロチンの刃は鋭いか
96 
 かれは低くひくく
98 
 かれがやってきた
102 
 ぼくは信じない
104 
 あいている戸に
106 
 かれには肉体がない
108 
 ふりかえってはならぬ
110 
 かれの頬はべに色
112 
 ぼくの袖をひく
114 
 寺院のなかは
116 
 広間で
118 
 ぼくの柩
120 
 黄いろい煙突
124 
 もみくちゃの シルクハット
126 
 赦したまえ!
128 
 くにを喪った
130 
解説
135 
年譜
149 
あとがき
165 

ロープシン (1879―1925)
本名サヴィンコフ。革命家・テロリスト。社会革命党(エス・エル)の主要メンバーとして活動しながら、ロープシンとして小説を発表。その両極の才能は現在の政治・文学界でも異様な存在感を放つ。著作に『一テロリストの回想』『蒼ざめた馬』『漆黒の馬』『無かったころのこと』等。1924年逮捕・投獄の後、投身自殺。
 
川崎浹 [かわさき とおる]
1930年、福岡県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、同大学大学院博士課程修了。現在、早稲田大学名誉教授。ロープシン『蒼ざめた馬』『牢獄』、サヴィンコフ『テロリスト群像』などの翻訳を手がける。『チェーホフ』『カタストロイカへの旅』『権力とユートピア』『「英雄」たちのロシア』『過激な隠遁 高島野十郎評伝』など著作多数。

小社刊のロープシンの著作物
[蒼ざめた馬 漆黒の馬]


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ロープシン 著
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