未知谷の刊行物【海外文学】



 
ネリー・ザックス詩集
ネリー・ザックス 著 / 綱島寿秀 訳
四六判変型上製352頁 5,000円(税別)
ISBN978-4-89642-247-4 C0098



初期から後期まで網羅的に抽出した220余篇が、
ノーベル文学賞受賞詩人“ネリー・ザックス”の全体像を浮かび上がらせる――

 
声高に何かを訴えるのではなく、むしろ世界を聞き取ろうとする姿勢を開いた詩人の心がおのずから作品の時空に共鳴している、それが彼女の詩に独特な、繊細な抒情の質を与えているのではないか。その心のひびきに触れること、ネリー・ザックスの詩を読むひとつは、そこにある。(「後記」より)

石化した天使が今も
記憶から
時間のない
初期の宇宙からこぼれ落ち
婦人病棟をさまよう
まだ林檎が噛じられる前におとずれ
朝焼けのなかで真実を前に歌った
世界以前の声とともに
琥珀の光に
つつまれて―
 
そしてほかの天使たちは不幸を前に髪を梳き
泣いている
外で烏たちが
その漆黒を深夜へとひろげる時に。
 
(今なお死は生を祝って「無題」より)


目  次

死の家の中で  死んでしまった……
11 
中空を行く煙のなかのあなたのからだ
〈たくみに考案された……〉/あなたがた、新しい家を……   /〈すでにもう死を……〉/死んだ子供が話す/〈死の園丁たちの〉/〈すでに天の慰めの……〉/〈長いことわれわれは……〉/あなたがた傍観者たち
 
死んだ花婿のための祈り
〈あなたのために……〉/〈それでもやはり神は……〉/〈かまどがある場所を、……〉/〈朝が白み、〉
 
空気に書かれた墓碑銘
行商人[G.F.]/踊り子[D.H.]/道化[H.F.]/薄明の女[B.H.]/やすらぎなき者[K.F.]/人形使い[K.G.]/女流画家[M.Z.]/溺れた女[A.N.]/ものを忘れる老婆[A.R.]
 
真夜中すぎの合唱
うち捨てられた……/救われた者たちの合唱/孤児たちの合唱/影たちの合唱/石たちの合唱/星たちの合唱/雲たちの合唱/樹たちの合唱/慰める者たちの合唱/まだ生まれていない……/聖なる地の声
 
星の蝕  わたしの父の思い出に
62 
そして時は裂くように
〈懇請者たちの天使よ、〉/〈夜よ、夜よ、〉/〈ああおまえ……〉/〈ゴーレム 死!〉
 
貝はざわめく
ヤコブ/もうとうに驟雨に……/ヨブ
 
生き残った者たち
秘密の墓碑銘/老いた人々/〈地上の別れは干涸びた。〉/〈世界よ、死が……〉/〈わたしたちはとても……〉/〈子供たちが死ぬときには〉
 
イスラエルの地
〈今やアブラハムは……〉
 
秘密のなかで(
〈あなたは窓辺に坐る〉/〈黄昏のなかで〉/〈しかし夜、〉/〈どこへ ああ……〉/〈太古の地の上の……〉/〈誰が知ろう、……〉/蝶
 
「星の蝕」に属して
イスラエルの地で/〈地球の人々よ、〉/〈夏が近づいて月が……〉
 
そしてその先は誰も知らない
108 
難民たちと逃走について
〈取り残された物たちが〉/〈それは難民たちの……〉
 
そしてその先は誰も知らない
〈誰が知るだろう……〉/〈音楽が作り出す……〉/〈カイン!……〉/〈目覚め―〉/〈鳥のように空を……〉/〈すべての陸地は〉/〈髪、火の粉のように〉
 
メリュジーネ
〈忘却! そこから〉
 
預言の翼
ハシディズム信者たちは踊る/〈この土地〉/〈ダニエルが星の印をつけ〉/〈そこでゾハルの……〉/〈そしてあたかもそれが〉/〈そして彼は心臓の……〉/〈そしてメタトロン、……〉
 
エンドルの時
エンドルの時
 
凋落
〈遺族たちは〉/〈最後の息の前に……〉/〈どれだけの海が……〉/〈ああ わたしの母よ、〉
 
瞼の裏の失神
〈そしてもう一度……〉/〈わたしはあなたを……〉/〈ここ、〉/〈海の塩っぽい舌が〉/〈夜に石で……〉
 
逃走と変容
〈地球はなんて〉/〈眠りのなか……〉/〈最愛の者たちの〉/〈逃げゆくさなか〉/〈あなたの眉の〉/〈老齢になると〉/〈誰かが〉/〈このように……〉/〈家を〉/〈あらせいとうの……〉/〈そして至るところ〉/〈眠りが息の網を織る〉/〈遠くから〉/〈先へ〉/〈夢遊病者は〉/〈白い蛇〉/〈はじけ散る〉/〈死〉/〈ああ 眼が……〉/〈唇の奥に〉/〈ふり返らずに〉/〈そしていつも〉/〈こうしてわたしは……〉
162 
塵なき地への旅
〈地球からやって来て〉/〈夜々のなかの夜〉/白鳥/〈わたしにはもう……〉/概要/〈この紫水晶の中には〉
204 
今なお死は生を祝って
〈石化した天使が今も〉/〈うち捨てられ〉/〈郷愁にかられ……〉/〈十字架の向こうへと……〉/〈今なお死は〉/〈時の始まりに……〉/〈公園のなかを……〉/〈そして追放された……〉/〈誰が呼ぶの?〉/〈死の水晶から―……〉/〈絶望の藪にからまり〉/墓碑銘/〈わたしは知らない〉/〈人はとても孤独で〉
215 
燃えあがる謎
234 

〈今宵〉/〈部屋の暖かさのなかを〉/〈無為〉/〈わたしは洗濯物を洗う〉/〈灯の明るさが暗い……〉/〈ドアの後ろで〉/〈ここでわたしたちは……〉/〈ただ死だけが……〉/〈この電信は……〉/〈孤独 継子の……〉/〈あなたの名前は……〉/〈悲しみの公爵夫人たち〉/〈許してください……〉/〈かき立てられた……〉/〈わたしの愛は……〉/〈現存の樹皮を剥がれ〉/〈闇が墓を掘るまで……〉/〈彼らは雪を語る―〉
 
II
〈薄明のまぼろし〉/〈うつろな時間はいつも〉/〈道―車―足〉/〈そのあいだにも〉/〈わたしが眼を閉じると〉/〈寸刻の時たちが……〉/〈それほど深く……〉/〈闘いを起こそうと……〉/〈おまえの百年〉/〈一足ごとにあなたに……〉/〈地と空の……〉/〈一体いつになったら〉/〈苦しみの赤道に……〉
 
III
〈わたしのベッドがある〉/〈そしてあなたは……〉/〈わたしは8の数字〉/〈そしてわたしは……〉/〈わたしは見た……〉/〈緑の草原での〉/〈ふり返らずに……〉/〈四日と四夜〉
 
IV
〈絶望〉/〈海は〉/〈自分の血で赤く〉/〈かつて〉/〈こんなにも短く……〉/〈人は自分に……〉/〈この幾千年〉/〈わたしはわたしの……〉/〈それは言葉以前の混沌〉/〈あらゆるものが……〉
 
探索する女
I/II/III/IV/V/VI/VII
282 
わかれなさい夜よ
290 

〈敵に日輪を……〉/病院の庭で白く/〈献身にひたむきに〉/〈たちならぶ言葉の……〉/〈それほどにまで……〉/〈病室のなかに〉/〈都会の轟音が〉/〈日ごと〉/〈いつも夕焼けの……〉/〈凶悪な夜の象形文字〉/〈こうして夜の……〉/〈痛みを覚えるときにも〉/〈苦しみは歌う〉/〈死よ―おまえに……〉
 
II
〈足の下の空間が〉/〈膝のなかに沈んだ〉/〈ここにわたしは……〉/〈あの〉
 
III
〈五月のぶなの葉〉/〈すでにあなたは……〉/〈わたしたちは……〉/〈計算の剣では〉/〈道の上〉/〈そこにあなたは……〉/〈すべては重くなる―……〉/〈黒〉/〈踏み入ることの……〉/〈思いに沈む者たちは……〉
 
IV
〈あなたがたわたしの……〉/〈わたしの窓の前で〉/〈わかれなさい夜よ……〉/生ある者たちを求めて/〈病気の沼地が〉
 
後記
329 
〈 〉付きのタイトルは原書では無題
……は末尾省略

ネリー・ザックス [Nelly Sachs](1890―1970)
ドイツ・ベルリン生まれ。
ユダヤ人迫害勃発により1941年スウェーデン・ストックホルムに亡命。神経症、晩年の癌など病と戦いながら詩作活動を続ける。1947年、処女詩集『死の家の中で』刊行。1960年ドロステ・ヒュルスホフ賞、66年ノーベル賞受賞。他、詩集に『星の蝕』『そしてその先は誰も知らない』『逃走と変容』『塵なき地への旅』『今なお死は生を祝って』『燃えあがる謎』『探索する女』『わかれなさい夜よ』、綜合詩集に『塵なき地への旅』『生ある者たちを求めて』がある。
 
綱島寿秀 [つなしま としひで]
1953年、東京生まれ。
1978年東京大学文学部卒業、1999年東京都立大学博士課程単位取得退学、現在、大妻女子大学、国際キリスト教大学非常勤講師。訳書に『海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選』(みすず書房)他がある。


この商品は下のフォームからご注文いただけます。
翌営業日に小社から折り返し内容確認のメールをさしあげますので、
万が一、小社からのメールが届かない場合は、
お手数ですが、電話等でお問い合わせくださるようお願いします。
 
なお、他の商品も合わせてご注文くださる場合などは、
注文方法]をご覧のうえ「買い物カゴ」をご利用ください。
このフォームは「買い物カゴ」とは連動していませんのでご注意ください。
書   名
著  者
単 価
冊数
ネリー・ザックス詩集
ネリー・ザックス 著
5,000円(税別)

お 名 前

郵便番号
000-0000の形で正確にご記入ください。
ご 住 所




※アパート・マンションの場合は号数までご記入ください。
電話番号

Eメール

このページの感想や小社へのご意見・ご要望・質問などをお聞かせ下さい。






 


[HOMEへ][新刊案内へ][全点リストへ]["海外文学"リストへ][前コードの書籍へ][次コードの書籍へ]

未知谷