一九三七年のクリミア。海辺で両親と夏休みを過ごす少年は、ある日、巣から落ちたワタリガラスのヒナを二羽見つける。ティルとネリと名づけられたこの二羽は、少年になつき、一家の人気者となった。しかし夏の輝かしい日々は過ぎ、秋の声が聞こえるころ、悲しい別れが訪れる。
こんなほのぼのとした、懐かしくて切ない小さな物語が、初めて翻訳された。作者はロシア未来派の伝説的詩人の妹。そしてこの本のために淡い夢のような挿絵を描いた画家のミトゥーリチは、じつは作者の息子で、この物語の少年とは十二歳のときの彼自身だった。
本文と挿絵の出会いがすばらしい日本語オリジナル版。小さな宝物のように大事にしたい本だ。
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