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恋愛寓話
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宮川俊彦 作 / 佐久間真人 絵
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112頁 1,000円(税別)
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ISBN4-915841-93-6 C0095
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享楽の極みなのかも知れない。背徳、愛人、汚辱、不倫、道ならぬ? ……道は多様? 恋愛の情景を七つの寓話に凝縮。現代の寓話第4作、今回はテーマをしぼりました。
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アザラシ*あるいは情愛の一景
北極アザラシが寒いと言った
白クマはそんなに厚いコートを着ているのに? と聞いた
「心が寒い」とアザラシは言った
クマはアザラシを抱いて温めた
離れると今度はクマも寒さを感じた
クマもアザラシを求めるようになった
二匹は日に何回も温めあった
そのうち二匹でいても寒さを感じた
アザラシはその尖った歯をクマの首に食い込ませた
クマは両手の鋭い爪をアザラシの体に深く埋めた
痛さが快感になり それが暖かさに変わった
二匹はつかの間の安堵を覚えた
その安心が忘れられず もっともっとと求めた
アザラシの歯もその顔の半分もどんどんクマの首に深く入っていった
クマの爪も手も腕もどんどんアザラシの体に入っていった
そして動かなくなった
長い冬が過ぎ北極は名ばかりの春となった
一回り大きくなったアザラシは紺碧の海に帰った
クマはアザラシに消化された
再び冬が近づいたとき
アザラシは また寒いと言った
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目 次
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頁
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アザラシ*あるいは情愛の一景
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5
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立札*あるいは慈愛の一景
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17
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フクロウ*あるいは愛着の一景
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29
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箱*あるいは愛玩の一景
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45
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ポチ*あるいは純愛の一景
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59
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老婆*あるいは憧憬の一景
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73
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障子*あるいは溺愛の一景
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85
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あとがき
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97
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